「苦しみを無くす魔法の言葉」について(2023年11月テレフォン法話)

 今月は、「苦しみを無くす魔法の言葉」について考えます。人は、ときに他の生き物が全く考えないことまであらゆる悩み苦しみを抱きます。以前ラジオでいのちの電話の役員の方が相談員募集について話しておられました。話の中でいのちの電話では1年中休みなく24時間体制で、相談員が電話を受けるボランティア活動を行っていますが、様々な悩み苦しみを訴える電話が休みなくかかってくるそうです。中にはもう死にたいと涙声で話す方もいるとのことでした。どうしたらこのような悩み苦しみを無くすことができるのでしょうか。
 沢木興道老師はある講話の席で「お釈迦さんは、人間は悩んだり苦しんだりする必要は全くないと言っておる。」と話されました。釈迦は、29歳で生老病死を始めとする人のあらゆる苦しみを無くす道を求めて厳しい修行を積み、35歳のときついに悟りを開きました。以来80歳で亡くなるまで人々に道を説きました。今から2500年ほど前のインドでは、人々の苦しみは現代を生きている我々では想像できない大きな苦しみであったはずです。
 釈迦は、何の教育も受けていない人たちにわかりやすく自ら悟った苦しみを無くす道を話し、深く尊敬を受け感謝された様子が伝えられています。釈迦が教えを説くとき、誰でも理解できるなにか魔法のような言葉をつかったのではないか、その魔法の言葉とは何かを考えてみました。
 魔法の言葉のヒントは般若心経の空にあるのではないかと思います。空は空という字ですべて実体がない、こだわらない心のように解釈されていて、般若心経の色即是空・空即是色は最も重要な言葉とされています。私は釈迦のあらゆる苦しみを無くす魔法の言葉は夢ではないかと考えました。空を夢と考え、色即是空を色即是夢と置き換えます。私たちはこの世に生きて悩み苦しみますが、それは全て夢の中の出来事と捉えます。夢であるなら必ず覚めます。夢から覚めるとは一つは忘れることです。私は以前悩み苦しんだことは90%以上忘れています、夢から覚めました。もう一つの夢から覚めるとは死ぬことです。いつまでも忘れられない残り10%の悩み苦しみは私の死によって夢から覚めます。無かったことになります。寝ていてよく怖い夢を見ますが、目が覚めた時夢だとわかってほっとします。今現在の悩み苦しみも夢の中の出来事と思えたら、いずれ覚めてほっとすることは間違いないので、いらぬ心配をしなくてよいのではないでしょうか。
 もう一つの空即是色ですが、この空も夢に置き換え夢即是色とします。人は生きている間思い切り見たい夢を見ることができると解釈したいと考えます。生きているとき夢を追い続け、いい夢をもって死を迎えることが極楽往生ではないでしょうか。
 先月8日に国民的歌手の谷村新司さんが74歳で亡くなりました。彼は死によってこの世の全てを失いましたが、大勢の観客の前で自らつくった名曲の数々を唄い続ける夢の中にいると思います。明治45年山口県防府市に生まれた漂泊の俳人種田山頭火は、59歳で亡くなるまで中国、九州、四国各地を歩き膨大な数の自由律の俳句を残しました。その中の一句に「無にはなれるが空にはなれず」があります。空になれる日を夢見て、できることをやっていくことが私の夢です。


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