弘法大師空海様のお言葉について(2017年8月テレフォン法話)

今月と来月は、真言宗の宗祖であられる弘法大師空海様のお言葉についてお話
しいたします。お名前は一般に呼ばれるお大師様とさせて頂きます。
今月のお言葉は、「一切の男子はこれ我が父なり。一切の女人はこれ我が母なり。
一切の衆生は皆これ我が二親・師君なり。」というものです。
文字から読み取れる意味合いは、全ての男性は私の父のような存在であり、全
ての女性は私の母のような存在である。全ての人たちは私のふたおやであり、
先生である。 と述べているのです。
大分前ですが、雑誌の座談会で高名な歴史学者の方が、我が国の歴史上最も優
れた天才を一人挙げろといわれたら間違いなく空海と答えると話しておられた
のを目にしました。確かにお大師様は各方面に類まれなる才能を発揮されまし
たが、一例をあげますと筆をとれば嵯峨天皇らとともに三筆と称され、数多く
の著作にみられるように名文を書かれます。また、お生まれになった四国讃岐
の今でも日本最大級の用水池である満濃池の修復工事を指揮して完成させるな
ど、その優れた能力にまつわる話は数多く残されています。
その大天才のお大師様が、子供から大人まで男女を問わずみんなご自分の観で
あり先生であるとおつしゃるのですから驚きです。その真意を考えてみますと
人間はどんな人でも優れた心や考えを持っており、接する人の言葉や態度から
そのことに気付いて教えられ、自分自身で見習っていかないといけないという
ことかと思います。
自分自身に振り返ってみますと、小さな子供たちに会ったとき自分にもこんな
純真な時があったんだなと思いますし、障害をお持ちのかたに会いますとお身
体が不自由でありながら一生懸命生きようとされている姿に心を打たれます。
確かに、いろいろな人たちから教えられることは多いと思われます。
私はこのお大師様のお言葉を深読みさせていただいて、全ての男女が親であり
先生であるとの言葉の全ての男女のなかに自分自身が含まれていると考えます。
全ての人が何か優れたものを持っているのであれば、自分自身にも何かあるは
ずであり、そのことを発揮することによって少しでもこの世で自身を生かせる
道があるのではないかと考えます。
このような考えに至ったのは、お大師様の教えの中で「仏様は遠くにおられる
のではなく、最も近い自分自身の中におられるのだから、他に求めないで自分
の中に仏様を探し求めないといけない」と述べられており、人間は生まれつき
生きとし生けるものを救ってくださる仏の性質である仏性を持っており、自身
の仏性に基づいた生き方が正しい生き方であるとの教えと考えているからです。
お大師様のように、全ての人を親であり先生であると感じることができるかと
いうと、私のような凡人はついつい自分のことばかり考えて人様のことを理解
しようとしないで日々の生活を送っているのが現実です。
時には、このお大師様のお言葉を思い返してみたいと念じております。
正覚寺テレホン法話をお聞きいただき、ありがとうございました


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