お釈迦様の様々な逸話の中から二つのお話を紹介します。(2017年11月テレフォン法話)

今月の正覚寺テレホン法話は、お釈迦様の様々な逸話の中から二つのお話を紹介します。
最初のお話は爪上の土というお話です。爪上の爪は爪という字です。爪の上の土という意味かと思います。
あるときお釈迦様が弟子の阿難さんと一緒にインドのとある地方を旅していた時、広大な砂漠のような平原に差し掛かりました。その時お釈迦様は身をかがめて右手の指で土をつまみ、つまんだ土を指を広げて下へ落としました。そして阿難さんに「この見渡す限りの平原の土と私の爪の上に付いている土とどっちが多いと思うか」と尋ねられました。阿難さんは「もちろん平原の土の方が多いです」と答えますと、お釈迦様は「そのとおり、世の中で毎日この平原の土の数ほど命が生まれてきているが、人間に生まれてくることができるのはこの爪の上の土の数ほど少ないんだよ」とお話になりました。
このことは、一人の人間としてこの世に誕生することがいかに難しいことか、有難いことか、また、この貴重な人間としての命を大切に使わないといけないということを示されておられるのかと思います。先般105歳で亡くなられた東京聖路加国際病院名誉院長の日野原重明先生が、子供たちに伝えた言葉「君たちの使える時間それが命」が思いおこされまます。
次の話は砂の城というお話です。
お釈迦様が数人のお弟子さんを伴ってお説法を頼まれた村へ向かっている途中、砂場のようなところで4~5人の男の子が砂を積んでお城のようなものを作っている所に出会いました。お釈迦様たちが立ち止まってその様子を見ていると、いちばん小さな子供が立ち上がって歩きだそうとしたとき、もう完成した大きな砂の城に足をひつかけて半分近くを毀してしまいました。すると壊された城をつくったと思われる大きな男の子が怒りだし小さな子供を叩いたり蹴ったりしだしました。けんかを止めると思われた他の子供たちも一緒になってその子をいじめだしました。お弟子さんたちが止めに入ろうとしたときお釈迦様は少し様子を見ようと言われましたが、すぐに遠くから子供たちの母親らしい声で「お昼御飯だよ早く帰っておいで」と呼ぶ声が聞こえました。すると「は-い」と元気な声で答えて子供たちは家の方へ走って行ってしまいました。その後には全て無残に踏みつぶされた砂の城が残されました。
お釈迦様はお弟子さんたちに静かに話されました。「あのようこの世に大事なものはないんだよ。もっと大事なものが現れれば大事と思ったものがどうでもよくなる。怒ったり人を傷つけてまで守らなければいけないものなんて何もないということだ」この逸話が教えていることは、お釈迦様が最もしてはいけないこととして人々に教えておられた、物事に執着してはいけないということを示していると思われます。
あれがほしい、こうしなければいけない、こうでなければいけない、あれがだめこれがだめといったこだわりは全て捨てなさい。いつでも切り替えて新しい道を探しなさい。人間でいられる時間は限られているので悩んでいる暇はありませんよということかと思います。お聞きいただきありがとうございました。


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