先月に引き続き弘法大師・空海、お大師様のお言葉からお話しいたします。
そのお言葉は「心が暗ければ出会うもの全てが災いとなり、心が太陽のように
明るければ、出会うもの全てが幸いとなる。」というものです。
分かりやすいお言葉かと思いますが、大変大切なことを私たちに教えてくださ
っていると思われます。自分の心が暗いままでいると自分と接する全ての人た
ちまで暗く、不幸な気持ちにさせてしまう。反対に明るく前向きな気持ちでい
ると自分と接する人たち皆が幸せな気持ちになり笑顔になる、といった意味合
いかと思います。
こういった経験はどなたもお持ちのことと思いますが、私も子供がいじめに会
って暗く沈んだ雰囲気でいるのを見ると、自分のことのようにつらくなり暗い
気持ちで日々過ごしたことがあります。また、病気で施設に入っていた親が施
設の行事で楽しそうにしているのを見ると思わず笑顔になりました。
人間であることの有難さは、基本的にだれでも自由に自分の生き方、考え方が
決められることだと理解しています。従って、暗く生きようが明るく生きよう
が個人・個人の自由です。ただし、お大師様がおっしゃるように心が太陽のよ
うに明るければ周りの人たちを全て幸せにすることができるのであれば、自分
の気持ちを明るく変えていくことを考えてみるのも有りかなと思います。
今年7月に105歳でお亡くなりなった、東京聖路加国際病院名誉院長の日野
原重明先生が講演で「人間は自分の生き方が変えられるんだよ」とお話になら
れました。日野原先生のおっしゃるとおり人間以外の生き物は、本能のまま自
然に身を任せて生きていくことしかできません、ゴキプリは他のゴキブリと違
う生き方はできないのです。人間は違います。他の人の生き方を見て感動し自
分も見習って変えようと思えば変えることができます。それには強い意志と大
変な努力を要することは間違いありませんが、優れた能力を持つ人間ならでき
るはずです。
数日前の新聞に、17歳の全盲の落語少年の記事が載っていました。生まれた
時から全盲で新潟盲学校高等部3年の少年ですが、小学校1年で始めた落語に
夢中になってこども落語全国大会で特別賞にも輝きました。母親が落語仲間と
の交流に目を細めるとも書かれており、この少年は落語に出会って自分を変え
家族や仲間を太陽のように明るくしていることが分かります。
まれにみる大天才のお大師様は、お弟子さんや信徒の方々、また、天台宗の宗
祖の伝教大師様など幅広い方々と深い交流があられたわけですが、笑顔でお話
になりみなさんを幸せなお気持ちにしておられたのではと勝手に想像していま
す。
本日は、正覚寺テレホン法話をお聞きいただきありがとうございます。