今月の正覚寺テレホン法話は、お釈迦さまが生まれてはじめて話されたといわ
れるお言葉について、お話しいたします。
そのお言葉は、「天上天下唯我独尊」というものです。お釈迦様は今から2,500
年ほど前北インドの釈迦国の王子として生まれたといわれています。お経に書
かれている誕生の様子は、母親のマーヤー王妃が出産のため実家のある隣国コ
ーサラ国へ向かった折、途中の現ネパール領ルンビニーというところで産気づ
き王妃の右手脇からお生まれになったとされています。
そして、生まれるとすぐ立ち上がり四方に7歩歩んで右手で天を指し、左手で
地をさして天上天下唯我独尊と話されたとなっています。よく4月8日の花祭
でお釈迦さまの誕生仏に甘茶をかけますが、その時の小さな誕生仏にこのポー
ズが見られます。生まれてすぐの赤ん坊が話せるわけがありませんが、それだ
け重要なお言葉ということかと思われます。
言葉の意味は、天上は宇宙、天下は地上、唯我は唯我、独尊は一人尊いである
ことから、まとめるとこの広い宇宙で私だけが尊いい存在であるということにな
ります。お釈迦様のおごり高ぶった言葉と批判する人達がいるようですが、そ
れは間違った解釈と思います。というのもお釈迦様が人々に教えを説く場合自
分が優れているとは一切おっしやいません。
考えてみますと、この広い宇宙で命がある生物の存在が確認されているのは地
球しかありません。しかもこの地球上の生物の中で人間だけが一人一人自分の
生き方ができる特別な存在です。つまるところ、一人の人間を考えると過去に
も、現在にも、未来にも同じ人は決していません。未来永劫自分だけの尊い存
在なのです。そして人間に生まれたことを心から喜ぶことができます。ですか
ら、全ての人間は一人一人尊い存在なのは間違いありません。
このお釈迦様の言葉について澤木興道老師の解釈をお話しいたします。 明治13
年三重県津市に生まれた曹洞宗の名僧澤木興道老師は、幼少にして両親を亡く
されたことから大変なご苦労をされ、永平寺等で厳しい修業を積まれて昭和40
年に亡くなるまで、寺も持たず家族も持たずひたすら全国を巡り講語をされて
回つたことから、宿無し興道とあだ名されました。
この澤木老師が、ある時の講話で「天上天下唯我独尊はお釈迦様ばかりではな
い。だれでもかれでもみんな天上天下唯我独尊じゃ」と言われ、また、「人並み
とかみんなと一緒何という生き方はだめだ。そういうのはグループ呆けという
もんじゃ。宇宙一杯生きろ。」とも言われました。
澤木老師は、人間は一人一人尊いのであるから自分にしかできない生き方をす
るのが良い、他人と同じ生き方をする必要はない、変わり者といわれてもいい
じゃないかと言っておられるのです。そういう考えからすると女性が男性のよ
うな生き方をしたり、男性が女性のような生き方をすることは決して間違って
いない、自分らしく生きているので正しいということになります。以上です。