「障害を持って生まれてきた子供との特別養子縁組」について(2020年8月テレフォン法話)

 今月は、「障害を持って生まれてきた子供との特別養子縁組」についてお話しします。新潟日報を読んでいましたら「障害の子 家族の一員に」との見出しで、夫婦で一才にも満たない子供を笑顔であやしたり、子供の顔に両側からほほをくっつけたりして、可愛くてたまらないといった表情の二組の特別養子縁組親子の写真が載っていました。ただ、幸せそうな笑顔の表情から二人はダウン症の子供であることが見て取れました。
 私は、以前から戸籍上も養父母が親となる特別養子縁組の制度に強い関心を持っていました。テレビで見たことがありますが、アメリカの有名な女優さんがアフリカやアラブの国で戦争で孤児となった、10人を超える幼児から高校生ぐらいの養子縁組をした笑顔の子供たちに囲まれ、優しい眼差しで子供たちの肩を抱いている姿に驚きました。テレビの解説で、欧米では国を超えて不幸な子供たちと養子縁組をするのはよくあることで、キリスト教の愛の精神に基づいていると話していました。
 それを聞いて、日本には仏教の慈悲の精神があるとの思いから、日本でも、育てられないまたは望まない子供を産んだという親の都合で、不幸な星の下に誕生した子供との特別養子縁組をもっと進めるべきと考えました。
差別をするわけではありませんが、出生前から重い障害を持って生まれてくることが分かっている子供との特別養子縁組を行うことは、親子にとって様々な困難が待ち受けていることを考えると、私には思いもよらないことでした。
生後2か月のダウン症の女児を長女として迎えた父親は、「障害は特別な手助けを必要としているだけ。人間性や、人間としての価値が失われるわけではなく、生まれてきただけで存在の意味はある。引き取らない理由はなかった」と話しています。
 もう1枚の写真の父親、この方は特別養子縁組を仲介する奈良市のNPO法人理事長で牧師さんですが、「障害が重く、医療的ケアが必要で、引き受け手が見つからない子がいたら自分で育てよう」と常々考えていたそうです。そんな思いの中で、出生前の超音波検査でダウン症や心臓疾患が判明した子供の母親が理事長さんのNPO法人に連絡し「死んでほしい」と話したそうですが、理事長さんが説得し生まれた男の子と特別養子縁組をしました。父親となった理事長さんは「障害は子供が望んだわけでも、非があるわけでもない。社会に必要とされ、愛されて大きくなるんです」と語っておられます。
 この重大な障害を持って生まれてきた子供たちの前に今後様々な差別、病気、不自由な体など大きな壁が立ちふさがりますが、親・兄弟をはじめ周りの深い愛情や慈悲の心を感じることで、乗り越えることができると確信しました。私はこの記事を読んで、人間が本来持っている愛や慈悲の精神はこれほどまでに強いものなのかと深い感動を覚えましたが、同時に、この精神に基づく行為はもはや人間の領域を超えている、神や仏の領域に入っているのではないかと思はざるを得ません。このような特別養子縁組を行った親子に幸多かれと祈る私の耳に、弘法大師空海の言葉が響きます「人は生まれながらにして仏である」


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