「変えることができないことは気にしない」について(2021年8月テレフォン法話)

 今月は、「変えることができないことは気にしない」について話ます。
 先日夜11時からNHKEテレで、「IPS細胞でノーベル賞を受賞された山中伸弥教授と新型コロナワクチン開発の立役者カタリン・カリコ博士の対談」を見ました。カリコ博士の故郷ハンガリーと山中教授のいる大阪をリモートで結んだ映像でしたが、現在世界が最も注目する二人の科学者の1時間に及ぶ対談は、テレビに自分の全神経が集中するような見ごたえのあるものでした。
 対談は、山中教授の「貴女は世界を救おうとしている」との言葉から始まりました。カリコ博士は「世界中から、貴女のおかげで遠くの孫に会いに行けるようになりましたといったお手紙をいただいています。」と女性らしい優しい笑顔で応えておられました。実際、私も打ちましたがカリコ博士を中心とするチームが開発したアメリカファイザー製やモデルナ製ワクチンの有効性は90%を超えるといわれており、インフルエンザワクチンの約50%の有効性を考えると、いかに優れたワクチンかがわかります。しかも、最低2年はかかるといわれる新たなワクチン開発を、わずか1年足らずで完成させる快挙を成し遂げたのですから驚きです。
 カリコ博士のお話しで、出身のハンガリーで結婚し子育てをしながら幸せに研究活動を続けていたそうですが、研究資金が打ち切られ行き詰った博士は、自身の研究を成し遂げるため研究の拠点を求めてアメリカに渡りました。しかしアメリカでも研究資金に恵まれず、尊敬する人に批判されるなど苦難の連続だったそうです。山中教授が、「貴女はどうやってその苦難を乗り越えることができたのですか」と尋ねると、カリコ博士は「私が変えることができない他人のことや状況を気にしません。私が変えられることに全力を傾けます。」と答えました。
 カリコ博士の最初の言葉「変えることができないことは気にしない」とは、博士を批判する人たちのことは気にしない、状況を変えることが難しいと判断したらそのことは考えないようにするということかと思います。仏教の開祖釈迦の教え「過去を振り返ってはいけない、もうそこには戻れないのだから、未来を不安に思ってはいけない、まだそこにはいないのだから」を思い出しました。どちらも考えてもどうにもならないことに心を痛めたり、時間を取られるのは限られた人生がゆえに無駄なことと言っておられるのです。
 カリコ博士の後の言葉「私が変えられることに全力を傾ける。」とは、一つは博士が生涯をかけて取り組んだ研究テーマの完成に全力を傾けた結果、世界を救うワクチンの開発につながったことです。また、山中教授が研究が成功した最大の理由を尋ねたとき、「何よりも熱意ある同僚がいたことです。」と答えました。これは、博士が研究を進展させるため最高の研究チームを組織したことを意味します。このカリコ博士の言葉に、釈迦の悟り「諸行無常」が思い浮かびました。諸行無常とはこの世の全てが変化し続けることを意味しますが、この世の全てが変えられることをも意味します。自分自身を含めなにかを変えようとするのであれば、命ある間でなければできません。


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