「六波羅蜜」について(2021年10月テレフォン法話)

 今月は、「六波羅蜜」について話します。東京2020パラリンピックがオリンピックに引き続き一年遅れで本年8月24日に開催されました。私はオリンピックに比べてパラリンピックはスポーツ界最高峰の大会とはいえないと考え
さほど興味がわかず開会式を迎えました。開会式で最初の衝撃を受けました。
それは生まれつき全盲の20歳の音大生佐藤ひらりさんが、堂々と国歌独唱する姿を目にしたときでした。佐藤さんの見事な歌声に場内が感動と静寂に包まれるのを感じ取りました。
 競技が始まっても感動は増すばかりでした。14歳の中学3年生山田美幸選手は、生まれつき両手がなく両脚の長さが違う障害をもちながら、背泳ぎの2種目で銀メダルを取りました。手で水をかくことができず、足のキックだけで懸命に泳ぐ姿に目頭が熱くなりました。目に障害のある女子マラソンで44歳の道下美里選手は、笑顔でパラリンピック新記録でゴールし金メダルを取りました。力を出し尽くした爽やかな笑顔にこちらも笑顔になりました。他にも私が見た全ての競技で勝者も敗者も言葉にならないほどの感動をくれました。パラリンピックで躍動する選手たちを目にして、この選手たちは今まさに六波羅蜜の修行積んでおられると感じました。
 六波羅蜜とは、仏教の言葉で菩薩が仏となるために実践する六つの修行を意味します。最初は布施です。布施とは他者が求めるものを惜しみなく与えることですが、選手たちは見ている人に勇気と希望と感動を与えてくれました。2番目は持戒で規則を守ることです。スポーツ選手はルールを守ることを常に心がけています。3番目は忍辱で耐え忍ぶことです。重い障害をもちながらつらい練習に耐えて、パラリンピック出場を勝ち取りました。4番目は精進で努力を重ねることを意味します。選手たちは毎日毎日血の滲むような訓練、練習を重ねてきました。5番目は禅定で心を安定させることです。国歌独唱した佐藤さんは生まれて初めて少し緊張しましたと言っておられましたが、平常心を保てなければ高度な競技に臨めません。最後は智慧です。智慧は真理を悟り正しい考え、正しい行動を実践することです。テレビで競技後インタビューに答える選手は、勝者も敗者も異口同音に「自分がこのパラリンピックの舞台に立てたのは、自分の力だけではありません。多くの人に助けられ、支えられたおかげです。皆さんに心から感謝しています。」と涙ながらに語っていました。この言葉に決して驕ることなく、正しい想いの智慧を感じました。
 仏教の開祖釈迦は、6年に及ぶ厳しい修行により人のあらゆる苦しみを無くす悟りを開き仏となりました。高名な宗教学者中村元博士は著書の中で、釈迦が思い描いた仏とは最高の人格者であると述べておられます。パラリンピックの選手は六波羅蜜の修業を積んで必ずや仏となられることを確信します。
 このパラリンピックの選手たちの背後に、苦しみの日々を送るおびただしい数の障害者の方がおられます。幸運にも普通の生活を送ることができる者は、周りの障害者の方に少しでも手を差し伸べることができないか考え、実践することが私たちのできる六波羅蜜の修業ではないでしょうか。


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