今月は、「最後まで精進」について考えます。
以前、NHKの朝のニュース番組おはよう日本で、敬老の日を前に「超元気なお年寄り3人を紹介」する番組がありました。一人目は、86歳のボディビルダーの男性で、筋肉粒々の鋼の肉体を披露していました。平日は毎日3時間のトレーニングをしているそうです。明日85歳以上が競い合うボディービル大会があるが、どうしても勝てない88歳のライバルがいるそうでその人の存在が努力を傾ける原動力と語っていました。次の男性は、90歳のサーバーで世界最高齢のサーバーとギネス認定されています。サーフィンは30歳から始め、80歳を超えてから波乗りの大会に出ているそうです。やる前から失敗すると思ったらやらないほうがいいと、毎日のように海に出て新しい技に挑戦していると語っていました。3人目の女性は、95歳の水泳選手で、自分の好きなことをして自分を輝かせてみたいと思い、60歳から水泳を始めたそうです。現在、女子95歳から99歳の部で3つの世界記録を持っているそうです。
また、先日民放のなんでも鑑定団で千葉県市原市での出張鑑定をやっていましたが、出場した92歳の女性は85歳から英会話を習っているそうで、司会のアメリカ人パックンと流ちょうな英語で話していました。同じく80歳の男性は、弁護士を目指して毎年司法試験を受けているそうで、死ぬまでには合格したいと語っていました。この二つの番組を見て、後期高齢者となった現在、決して無理をしないという考えを変えた方がよいかと思い始めました。もちろん老化した体と相談しながらですが。
仏教の教えに、仏となるための六つの修行「六波羅蜜」がありますが、その一つに精進があります。精進とは努力を重ねることを意味します。人類の進化の過程において精進こそ最重要の語句といえます。約40万年前中央アフリカに出現した人類の祖先ホモ・サピエンスが、北へ移動を始めヨーロッパからアジア、アメリカ大陸へと苦難を乗り越えて移住した人類は、現在世界中に優れた文化を有する地球上の生物の頂点に立つ存在として君臨しています。
人間はいかにしてそのように進化することができたのかを考えるとき、第一に精進するという優れた能力を有していたことが挙げられます。精進を重ねて身に着けた能力を遺伝子として子孫に贈り、代々精進による新たな遺伝子を次の子孫に贈り続けることによって、現在のように宇宙にロケットで飛んでいくような考えられないほど進化した人間が誕生したと考えられます。
前段で紹介した元気なお年寄りたちは、人間が本来有している精進の遺伝子を多く受け継いでいるのかもしれません。人は皆、大変苦しい思いをして日々精進の修行に立ち向かっています。人間の祖先がもっと苦しい精進を重ねて現在の我々があることに感謝の思いを持つことが大切かもしれません。
聖路加国際病院の故日野原重明名誉院長は、100歳近くになって子どもたちと触れ合うことが多かったそうですが、小学生と俳句を創って遊んでいた時、日野原先生のつくられた俳句は「君たちのつかえる時間それが命」でした。使える命に限りがあることを知っているのは人間だけです。日野原先生は、人として命がある限り最後まで精進して、何かを成し遂げるよう子どもたちに教えておられたと思います。