「救いたいと実行する」について(2026年5月テレフォン法話)

 今月は、「救いたいと実行する」について考えます。
 最近の報道で、アメリカのトランプ大統領とローマ教皇レオ14世の対立が表面化していることが報じられました。内容は、アメリカのイラン攻撃に「いかなる戦争にも反対する」として批判の発言を繰り返すアメリカ出身の教皇に、トランプ大統領が「大統領を批判する教皇は望まない」などと激しく反応しているとしています。これに対し、教皇は「私はトランプ政権を恐れてはいない。今後も戦争には声高に反対する」と強調しています。この報道を見て、世界中の人が教皇の勇気ある発言に共感を覚えたと信じます。戦争は、罪もない一般市民を殺害し傷つけます。アメリカ軍によるイランの小学校への空爆により、多くの子どもたちが殺害されたとの報道に世界が心を痛めたはずです。
 真言宗の最も重要なお経に大日経があります。大日経の中に、真言宗の御本尊大日如来が唯一直接説かれた大日経の三句があり、文言は「菩提心を因とし、大悲を根とし、方便を究竟とす」というものです。
 三句の解釈は、初めの菩提心を因としですが、仏教の開祖釈迦は、人は煩悩という限りない欲望に心を奪われ正しい生き方ができない、それゆえ正しい生き方を求める心菩提心を持つことが大切と説きました。
 二句の大悲を根としですが、大悲は慈悲の心で大きな悲しみと書きます。仏教の重要な教えに、人は慈悲の心を持って生まれてくる仏であると説かれます。慈悲の心は、悲しみ苦しむものを救いたいとする人の根本にある心です。二句は、正しい生き方菩提心を求めるときに、全ての人が持つ慈悲の心を中心に考えることが重要と説きます。
 最後の方便を究竟とすは、方便は社会に対する働きかけを意味し、つまりは実行することが最も重要ですと説いています。正しい生き方を求めて、悲しみ苦しむものを救いたいと考えても、実行しなければ正しい生き方が完成したことにならないと大日経の三句は教えています。
 ローマ教皇が戦争反対を世界に向けて発信することは、大日如来の教えを実行していることにほかなりません。
 先月中旬の新聞に、熊本地震から10年となったことが報じられましたが、熊本地震では278人が犠牲となり、家屋の被害が43000棟にも及びました。熊本地震の3週間ほど前、家内の熊本の友人から招かれて夫婦で熊本へ出かけました。熊本では壮大な熊本城、数多くの赤牛がゆっくり草をはむ雄大な阿蘇の山並み、天草の紺碧の海辺に立つ世界遺産の江戸期の教会群など、訪れたすべてに感動しました。しかし、20日後熊本に震度7を2回観測する巨大地震が襲い、テレビの画面で訪れた熊本の状況が一変していることに驚愕しました。家が倒壊し、避難所で悲嘆にくれる多くの人たち、子どもが行方不明になり連日遭難場所と思われる川べりを探し回る夫婦などの悲惨な映像に、暗い気持ちで日々を送りました。そんな中、地震発生から数日後、全国から多くのボランティアの人たちが駆けつけている報道を目にしました。まだ余震が続く危険な現場で、被害を受けた家屋の片付けに泥だらけになって取り組む姿に、大日経の三句が頭に浮かびました。
 あなた方は、大日如来の教えを実行する大日如来の分身です。人は、生まれながらにして悲しみ苦しむものを救わんとする仏なのです。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です