「どうせ死ぬんだから」について(2024年11月テレフォン法話)

 今月は、「どうせ死ぬんだから」について考えます。
 行きつけの本屋で変わったタイトルの本を見つけました。タイトルは「どうせ死ぬんだから」で、副題は「好きなことだけやって寿命を使い切る」です。著者は、東京大学医学部卒の老人専門の精神科医で、1万人以上の患者さんを診察したそうです。この医師の35年にわたって高齢者を診てきた結論は、「人間はどうせ死ぬんだから、いまを楽しみ、いまを充実させたほうが、先の心配をするより、よほど現実的だということです。
 健康を気遣い、食べたいものを我慢し、飲みたいお酒を我慢しても、あるいは飲んでいてかえって気分が悪くなるような薬を我慢して飲んでいても、残念ながら死ぬときは死にます。」と書いています。また、高齢者になってやりたいことを我慢しようと考えたとき、魔法の言葉「どうせ死ぬんだから」を口にしてください。するとやりたいことをやらなきゃ損かなと思えるかもしれませんと語っています。
 若い人にも、この医師の魔法の言葉を考えてもらいたいと思います。人は自己と他者を比べようとします。自分と比べてこの人は頭がよくて、いい大学に入っていい会社に就職したとか、あの人は顔がよくて女性にもてるそれに比べて自分はとか考えてしまいます。その時、この魔法の言葉「どうせ死ぬんだから」をつぶやいてみてください。人は必ず死にます。頭のいい人も顔のいい人も、うらやむ自分も必ず死にます。死んだら何の価値もなくなることから、うらやむことも自己を卑下することも必要ないということになります。
 著者は、「長生きすることよりも、長生きすることで何をしたいのか、ということの方が大事じゃないですか。ぜひ、長生きしてよかったと思えるものをつくってください。」とも語っています。
 仏教には多くのお経がありますが、最も多くの人に唱えられ写経されているのは般若心経と云われています。般若心経で特に重要な箇所は、色即是空・空即是色の二句と解説書で知りました。最初の色即是空ですが、この世の全てのものは空であると説いています。空とは空の字でこの世に永遠のものはないことを意味します。あの太陽でさえ、寿命が100億年ほどであることをテレビで宇宙科学者が解説していましたが、我々人間の寿命が短いのは自然の法則かもしれません。
 この色即是空は、著者の魔法の言葉「どうせ死ぬんだから」と同じと考えると理解しやすい気がします。次の空即是色ですが、言葉どおり捉えると永遠でないものがこの宇宙で存在しているとなります。確かに永遠なものはないかもしれませんが、私は今この瞬間宇宙でただ一人の存在としてこの世に生きていることを意味します。人として命があることがいかに大切かを説いています。 
 著者の、「長生きしてよかったと思えるものをつくってください」の言葉と同じと考えます。この医師の言葉には、教えられることや共感することが数多くありました。ただ若い方、高齢者であっても人生にやり残したことがあって一生懸命取り組んでいる方は、現代医学で体にいいと、される食事・運動・検査等を取り入れ、体に悪いとされることは排除して、たった一度の大切な命を健康で全うしていただきたいと考えます。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です