今月は、NHKEテレで放映された情熱教室についてお話いたします。以前夜遅くEテレを見ていたら偶然情熱教室という番組をやっていました。世界で最先端の研究者が大勢の受講者を前に授業を行っている様子を世界に発信しているもので、いずれもさすがは世界的な学者と思わせる興味深い授業ばかりでした。
中で仏教の教えに近いものを感じたお二人の学者のお話を紹介します。お一人はアメリカの物理学者で自髪の日系人と思われる先生でした。この先生のお話で意識に関する分析に感動しました。先生は最も下等な生物の植物やミミズのようなものは環境を意識することができるといわれました。環境ですので熱いとか冷たいとか、乾燥しているとか湿気があるとか、エサがあるとかいったことかと思います。より高等な生物の犬猫のような動物や鳥、魚といぅたものは仲間を意識できるというのです。雄雌が互いに求め合い、家族や群れを構成するといったことからきていると思われます。最後に最も高等な生物である人間は未来を意識することができるといわれました。これには思わずその通りですと叫んでしまいました。
人間だけが未来を意識できるので、将来の自己の目的に向かって努力しますし、病気にならないように生活習慣を改めることができるわけです。この未来を意識できる人間の優れた能力が人間社会をこれほど偉大なものにしたともいえます。反面人間は未来を意識するがために、生みの苦しみ、老いる苦しみ、病気になる苦しみ、死の苦しみの仏教でいうところの生老病死の苦しみまで起きる前から意識してしまいます。釈迦はこの人間だけが意識する苦しみをいかになくすことができるかを生涯通して意識されたのだと思います。
もうお一人はヨーロッパの方で、国は忘れましたが高齢の生物学者の先生でした。この先生が授業の途中の休憩時間に、屋外の芝生で談笑している4~5人の女子高校生と思われる授棄参加者の輪の中に入って行って、「私は生物学者として生物の進化の研究を続けているが、若い女性の考えに大変興味があるので君たちが今何を考えて過ごしているか教えてほしい」と話しかけました。すると一人の女生徒が先生に「私は今生きる目的が分からなくて考え続けています」と話しました。すると先生は「今の君の悩みに参考になるかわからないが、地球ができて36億年といわれるがそれから何億年もたってアメーバーのようにやっと目に見えるごく小さな生物が誕生して、それから何億年もかけて生物は進化を続けてきたが、その間生きる目的を考えて生きている生物はないんだよ。ただ目の前のことを一生懸命やっているのにすぎないのさ。この私にしてもただひたすら好きな生物の進化の研究を続けてきたが、これが生きる目的なんて考えたことはないよ。気がついて周りを見てみたら家族が皆幸せそうにしているのを見て僕の人生は間違ってなかったって思えるんだよ。」と話されました。
私は釈迦の言葉「過去を考えるなそこには戻れないのだから、未来を心配するなまだそこにはいないのだから、最も大切なことは今なすべきことを考えることだ」との言葉を思い浮かべました。