「心に響く法話」について(2022年12月テレフォン法話)

 今月は、「心に響く法話」について話します。
 仏教伝道協会から冊子が送られてきました。この冊子は仏教の教えを世に広めるために刊行され、毎年のように送られてきます。今回のタイトルは「みちしるべ名講話選 縁」です。内容をみると各宗派の著名な僧侶22名による法話のお手本を収めたものでした。心に響く法話の一部を紹介します。
 最初は、涅槃経の「生まれてくる者は必ず死ぬ。寿命は必ず尽きる。形のあるものはくずれる。盛んなものもいつかは衰える。会う者には別れがある。」を取り上げ、この真理を静かな目で見つめなければならないと思います。「今を生きていることの素晴らしさ」「本当の幸せ」は、この真理を見つめるところから始まります。と述べています。釈迦の教えの核心を話していると思います。人は必ず死ぬ、愛するものとは別れがあることを心に深く持つことができれば、今生きているこの一瞬がとてつもなく有難く大切に思えるはずです。今生きている命をどうつかうか、この一瞬を決して無駄にはできません。
 つぎに、田舎の山寺で草取りに一生懸命な住職さんの法話の中で、「だれかが、うつむいている草はない。うつむいているのは人間だけだ。などと言っていましたが、なるほどそうだと名も知らない雑草に感心させられ、大事なことを教えられることもしばしばです。」と述べておられます。あらゆる生き物の中でうつむいているものがいるのは人間だけかもしれません。なぜ人はうつむくのか、それは人間は頭がよすぎて考えなくてもよいことまで考えてしまうせいだと思います。例えば新型コロナウイルスに感染した場合、どうして感染してしまったのか、周りの人はどう思うか、これからどうなるのか、治って復帰した場合なんと言えばいいのかなどとうつむいて考え込みます。他の生き物でそんなことを考えるものはいません。ただひたすら生きようとするだけです。釈迦は、人はなぜ死ぬのかといった考えてもどうしようもないことを考えてはいけない、人として正しく生きる道を考えなさいと教えます。この法話を読んで、人間は地球上のあらゆる生き物の頂点にいるといわれますが、他の生き物から教えられることも多いと感じます。
 最後に、奈良薬師寺の復興を成し遂げられた高田好胤元管長との思い出をお話しされ、高田管長から詠み人しらずの古い歌を教えていただいたとの法話がありました。その古い歌は「諸人よ 思い知れかし おのが身の 誕生の日は 母苦難の日」というものでした。そして高田管長が「誕生日には命がけで生んでくれたお母さん、苦労して働いて育ててくれたお父さんに感謝を捧げるのが誕生日のあるべき真の姿だよ」と諭していただいたことを述べていました。
この古い歌を知って、全ての人がこの貴重な人生を手に入れることができたのは、母親の恐ろしいまでの生みの苦しみがあってこそであることを思い知りました。全ての男性は、この生みの苦しみを乗り越えて一人の人間を世に出そうとする、偉大な母性を有する全ての女性に尊敬と感謝の気持ちを持ち続けなければいけないと考えます。平塚らいてうの「元始、女性は太陽だった」の言葉が耳に響きます。天照大神も邪馬台国の王卑弥呼も女性でした。


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