釈迦の教え「自利利他」について(2025年6月テレフォン法話)

 今月は、釈迦の教え「自利利他」について考えます。
 居間の本棚に、仏教の開祖釈迦の教えを分かりやすくまとめた文庫本「心がほっとするほとけさまの50の話」がありますが、ときどき読み直しています。その中の、お釈迦さまは「幸せになりたければ自利利他の道を行きなさい」と教えていかれましたについて紹介します。
 本では、冒頭自利利他とは「相手を幸せにすることで(利他)、自分が幸せになれる(自利)」ということです。相手の幸せを思いやった言葉や行動は、かならず、あなた自身に幸せを運んできてくれる、ということですね。と書かれています。最後に、幸せの花は、相手と自分との間に咲く花なのです。と説かれています。
 この釈迦の教え自利利他について、思い起こすことが2点あります。一つは、以前、NHKのニュース番組で日本で一番多くチョークを製造している会社が紹介されました。その会社の社長さんが、社員の70%が障害者の方と説明され、大勢の障害者の方が真剣な表情で仕事をしている様子が見られました。昼休みには、食堂で皆さん笑顔で話しながら昼食を食べていましたが、その輪の中に笑顔の社長さんもおられました。番組で、障害者の社員の母親がインタビューに答えて「会社で働くようになっておかげで息子はすっかり明るくなり、毎日会社に行くのが楽しいと云っています。お給料がでると、たまにはご馳走するからと言って私たちを食事に連れて行ってくれるんですよ」と笑顔で話していました。この番組を見てなんていい会社なんだろうと感動したことを覚えています。
 先日の新潟日報一面下のコラム日報抄に、その会社の社長さんのお話が載っていました。社長さんは、人間の究極の幸せは四つだと著書に書いていて「人に愛されること、人に褒められること、人の役に立つこと、そして、人に必要とされること」と言い、禅寺の住職から教わったこの四つの幸せは、働くことで実現できると確信していたと話されたそうです。
 このコラムを読んで、社長さんのお話は釈迦の教え自利利他のことではないかと考えます。障害者の社員の皆さんは、一生懸命働くことで会社やチョークを使う学校の先生たちに喜ばれつまりは利他です。社員の皆さんも家族に愛され、社長さんに褒められ、チョークを作ることで人の役に立ち必要とされていると感じ幸せを得ることができるつまりは自利です。
 もう一つは、高校の同期で長らく医者をやっている友人から聞いたことですが、医学部を出て医師になり医局に残ったときアメリカの大学附属病院に研修に行ったそうですが、配属診療科の教授に云われたことを今でも覚えていると言って話してくれました。教授は「人が社会で成功するには四つの要素がある。一つは持って生まれた能力で20%、次は本人の努力でそれも20%、三つめは運に恵まれることでそれも20%、最後の40%は人柄だ」と話したそうです。
 教授は、友人に患者に思いやりがあり信頼される医師になるよう指導したと思われます。人柄がいいとか悪いとか云いますが、人柄とは釈迦の教え自利利他を実践することではないかと考えます。絶えず周りの人を幸せにすることを思い、叶えることができたら、人生の望みを達成できたことに自身も幸せな気持ちになれる、そんな人柄の人になることが理想ではないでしょうか。


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