「自殺」について(2022年11月テレフォン法話)

 今月は、「自殺」について考えます。
 日本は自殺者が多い国と聞いています。かつて年間3万人代だった自殺者が徐々に減り2万人代半ばまで減少しましたが、コロナ禍でここ数年は増加しつつあります。特に若い人の自殺者が増加傾向で10代、20代の死因の1位は自殺です。中には鬱病のような病気のため治療を続けても医療の力及ばず自殺される方もおられます。何とか救える命はないかと公的機関やいのちの電話のような民間ボランティア団体が昼夜を問わず活動しています。仏教の教えにより自殺を思い留まる方がいてくれたら仏教の目的にかなうことと考えます。
 曹洞宗の沢木興道老師は、ある講話の場で「人間は、悩んだり苦しんだりする必要は全くないとお釈迦さんが言っておる。」と話されました。その場にいたら老師の真意を知ることができたでしょうが、今は推測するしかありません。
釈迦の悟りの重要なものに「諸行無常・諸法無我」があります。諸行無常は、この世にあるものは全て変化する宇宙の法則を意味し、生まれたものが老い、病気になり死んでいくことも自然の変化の一つであり、悩み苦しみも時が経てば変化しなくなります。
 諸法無我は、諸行無常によってこの世にあるものは全て変化することを知り、永遠の自分はないことから、もともと自分などなかったことに気付くことを意味します。もともと無い自分のために悩み苦しむ必要はないのです。
 沢木老師は、別の会場での講話で「お釈迦さんだけが天上天下唯我独尊ではない、人間みんな天上天下唯我独尊じゃあ」と言われました。天上天下唯我独尊は、お経にでてくる釈迦の言葉とされるもので「私は宇宙でただ一人の尊い存在である」の意です。確かに老師がいうように、人間は一人として過去・現在・未来に同じ人はいない宇宙でたった一人の貴重な存在です。このことは、動物や鳥、魚のような地球上の他の生物と比べると、人間の限りない優れた能力は歴然として明確です。沢木老師は言葉を続けて、「したがって、みんなと同じとか、人並みにという生き方はだめだ。宇宙でたった一人の自分にしかできない生き方をしろ。」と話されました。
 人は人間に生まれた最高の幸運を認識し、自分らしく堂々と生きたらいいのです。他者と比較したり、他者の言動を気に留める必要はありません。もし、死ぬほど苦しい気持ちになったら、ご自分の思いが間違っていないか、周りで見守ってくれている方や相談機関にいっぱい話してみてください。
あなたと違う考えが聞けると思いますよ。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です